スペイン文化を知らない人でも、おそらく知っているであろう単語「シエスタ」。
シエスタ(siesta)の本来の意味は、昼食後の長めの休憩を指します。
スペイン人は、昼食をかなりガッツリ取ります。それこそ、スープ前菜から始まって、ワイン付のフルコースを、1時間以上かけて食べるんです。スペインで普通のレストランに入ると、ランチはどこも前菜+メイン+デザート+飲み物のお腹いっぱいコースが出てきます。んで、お会計はせいぜい10〜15ユーロ程度ってんだから何て素晴らしい国・・・
おっと、さっそく話が逸れてしまったぞ(汗)
で、ガッツリ昼食の後、だいたい2時間くらい昼寝も兼ねた休憩を取る文化がある。これが本来の「シエスタ」です。
実際、私がスペインに行った時も、小さなお土産物屋さんなんかはしっかりシエスタ休憩を取っていて、2時3時あたりの時間帯ではクローズしていることが多かったです。何も知らない外国人観光客にとってみれば、完全無駄足になるわけです。
そんな古き良き(?)スペインの文化であるシエスタも、現在では都市部や観光地中心に徐々になくなってきている模様。バルセロナ出身のスペイン語の先生に聞いてみても、「田舎ではまだあるけど、バルセロナではほとんどもうシエスタはないよ〜」とのこと。スペインの公務員制度でも、2006年にシエスタ休憩は廃止されています。
今では、昼食後に取る20分くらいの短い睡眠、まあいわゆる昼寝ですが、これを指してシエスタという場合が多くなっているんだそうですね。
と、いうことで、ここから先は、現代版シエスタともいうべき20分〜30分程度の昼寝のことを「シエスタ」と呼ぶことにします。
こんなにある!シエスタの効果
シエスタは、科学的にもその効果、メリットが証明されています。
外国人向けのスペイン語の教科書、「ELE ACTUAL」のコラムによると、シエスタをすることにより疲れや緊張に加え、心臓病リスクをも低下させ、また集中力や学習能力の向上も見込めるため、多くの専門家がシエスタを勧めていることが書かれています。
実際に、海外の研究機関(カリフォルニア大学)の研究でも、シエスタが脳の学習能力の向上に有効であることが実証されているようですね。
確かに、私も眠くて眠くてしょうがないときは、お昼ごはん時ついでに10分くらい寝ることがありますけど、その後予想外に仕事がはかどったって経験、何度もしてます。同じような感覚を持っている方も多いはず。
では、なぜシエスタがこれだけ効果があるのか。
これについては、TEDカンファレンスで、脳科学者のJeff ilifがなかなか興味深いスピーチをしています。
スゴく単純に要約すると、
・ 脳の老廃物の排出は、眠っている間だけ行われる。
ということだそう。
つまり、シエスタをすると、日中脳を使うことで溜まった老廃物が、全部とはいかないまでも、少しだけ排出される。脳が少しだけ掃除されるんじゃないかと推測されます。
午前中仕事や勉強してると、机の上やパソコンのデスクトップは結構散らかるわけで、それを一旦掃除するととその後の効率がちょっと上がりますよね? それは、脳についても同じことがいえるんじゃないかと。
(この辺のくだりは、スピーチの中で触れられてなかったので、私の推測も入ってますが)
余談ですが、これだけ健康にも脳の働きにも好ましい習慣「シエスタ」を日常的にとっているスペイン、なのになんで経済危機に陥ってるの・・・?と思われる方もいるかもしれません。
その答えは明白!
あの人たち、基本的に効率とか学習効果以前に、もうほとんどアイデンティティとして仕事嫌いですから(笑)
※ この辺、ちゃんと理由を追っかけてみると、キリスト教教義にも関わってきて結構オモシロイんですが、それはまた別記事で・・・。
広がる「シエスタ」の習慣
世の中の大部分では、特に日本の社会では、昼寝=居眠りと思われ、あんまりいい印象がないのも事実。かの「鉄の女」マーガレット・サッチャーは、「睡眠は弱者のもの」という迷言を残しちゃってますし。
※ 個人的には、日本人に昼寝の印象が悪いのは、のび太くん的イメージによる悪影響ってのもある気がします。それも、多分に(苦笑)
それでも、最近になって、シエスタの習慣はスペイン社会以外にも広がっています。ネットニュースで取り上げられていたのでご存知の方もいるかもしれませんが、他の欧米諸国や、最近は日本でも、昼食後の昼寝を取り入れる企業が増えているんです。
http://w-kawara.jp/working-hours/allow-a-nap/
科学的に効果が実証されている以上、取り入れない手はないってことなんでしょうね。20〜30分の休憩で、その後の作業効率が上がるんであれば安いもの。むしろ、企業にとっては残業代削減などにつながるため、メリットのほうが多いんでしょう。
ナイキやグーグルなど、クリエイティブな企業がシエスタを採用しているのも頷けます。
ネットがこれだけ普及した今の世の中、私たちの周りには情報が溢れかえっています。たぶん、ネットがなかった20年前から比べると、50倍、100倍くらいの情報を、現代の人たちは処理しているはず。(だって、グーグル叩けば情報なんていくらでも出てくるし)
だから、頭や脳の疲れ方、老廃物の溜まり方も、間違いなく早いペースになってると思うんですよね。
もとはノンビリ屋のスペイン人たちの習慣だったシエスタ、形こそ少し変わっていますが、現代に生きる人々にこそ、必要な習慣なのかもしれません。
番外編
昼寝や夜眠る時にアイマスクをする人も多いですが、2015年に発売される超画期的なアイマスクがこちら。内臓プログラムによって睡眠中のカラダの変化を感じ取り、個人個人にとってのベストな睡眠スパンを導いてくれるというスゴい機器。
ホントかどうかはわかりませんが、2時間睡眠で8時間分の睡眠効果を得られるらしいです。
これがあれば、30分のシエスタで数時間分の睡眠効果が得られるかも!?
・・・そうなると、それはもうシエスタじゃないかもね^^;