リーガ・エスパニョーラにとどまらず、世界のサッカー界を見渡しても屈指のビッグイベントである「エル・クラシコ」。リーガ・エスパニョーラの2チーム、レアル・マドリーとバルセロナの対戦を指します。
基本的にはリーグ戦における対戦が多いですが、どちらも強豪チームなので、スペイン国内のカップ戦Copa del rey、またチャンピオンズリーグなどでの対戦でも、クラシコと呼ばれます。
今回は、気分を盛り上げクラシコを10倍楽しむための記事です。
3分でわかる、クラシコの歴史的背景
マドリッドとバルセロナというスペインを代表する2都市を本拠とするチーム同士の対戦。これだけでもライバル意識は盛り上がるってもんですが、クラシコを語るには、スペインとカタルーニャ州の関係を避けては通れません。
カタルーニャ州は、スペインがイスラム勢力の占領下にあった時代も自治を守り抜いたという背景があり、もともと住人の独立心が強い地域でした。1930年代のスペイン内戦までは高度な自治が認められ、スペイン語(カステジャーノ)とは体系的に異なる言語であるカタルーニャ語が公用語として話されていました。今でも、バルセロナの街の看板で、一番上に書かれているのはたいていカタルーニャ語です。
意外に思われるかもしれませんが、カタルーニャ語はスペイン語ではないんですね。むしろ、フランス語に近い言語です。東京弁と大阪弁のような関係とは、根本的に違うんです。
ところが、1930年代後半から始まったフランコ独裁体制下、首都マドリッドは手厚い優遇を受ける一方で、内戦で最後まで抵抗したカタルーニャは文化的弾圧を受けます。代表的なのは、カタルーニャ語の禁止。
自分たちの慣れ親しんだ母語を公に話せないというのは、カタルーニャの人々にとってさぞ苦しく、屈辱だったでしょう。
しかし、フランコはサッカーにはそれほど興味がなかったらしく、スタジアムはおおっぴらにカタルーニャ語を話すことができる場所の一つだった模様。
ただでさえ盛り上がり、アツくなるサッカー観戦。
そこで、普段話すことができないカタルーニャ語で話し、叫び、野次を飛ばすことができた、
この状況は、カタルーニャの人々にとって、バルサをサッカークラブ以上の存在にするには十分なものでした。
以来、レアル・マドリーとバルサの対戦は、単なるサッカーの試合の枠を超え、政治的、文化的な代理戦争のような意味合いを持つに至ったのです。この、強烈なライバル関係は、日本ではちょっと生まれ得ません。
この理屈だと、同じくマドリッドを本拠とするアトレティコ・マドリーもカタルーニャの人々の目の敵になってもおかしくないんですが、アトレティコとバルサの間にはそれほど強いライバル意識があるようには思えません。
これは、レアル・マドリーが富裕層の支持を受けてきたクラブなのに対し、アトレティコ・マドリーは労働者階級の支持を受けて発展してきたクラブだというのも、理由の一つでしょう。
あくまでカタルーニャの人々にとって、独裁の象徴であり、憎むべき、倒すべき的はレアル・マドリーだったってことです。
クラシコを観戦する方法は?
クラシコを日本から視聴するには、WOWOWか、スポナビライブに加入する方法があります。
大きな街に住んでいるのであれば、試合を放映しているスポーツバーに行くのも手です。が、日本とスペインの時差の関係上、リーガの試合が行われるのは深夜なので、徹夜覚悟でないとこの方法は取りづらいですね。
WOWOWは、月額2300円(税別)。加入初月は無料で、料金が発生するのは翌月からです。
「初月に解約して一切無料」ってのはさすがにできませんが、2ヶ月目で解約ができるので、やろうと思えばクラシコの日を含む約2ヶ月間のみ、2300円で視聴するってこともできちゃいます。
スポナビライブは、月額1,480円。ただし、ソフトバンクユーザーや、Yモバイルユーザーであれば月額980円になります。こちらも、初月は無料です。
スポナビライブは、加入月に解約することもできるので、1ヶ月間であれば無料で視聴することができます。
スポーツバーで2時間試合観戦するとなんだかんだで3000円くらいはかかってしまうでしょうから、これらのサービスに加入した上で自宅で視聴するのが体にもお財布にも優しいです^^;アトレティコやセビージャ、バレンシアなど、他にも面白いチームがありますし。
なお、インターネットからWOWOWに加入すると、最大2ヶ月間、月額が1800円(通常より500円引き)となります!
2000年代、クラシコの結果の推移
リーガの行方を左右するのみならず、前述の歴史的背景も相まって毎回すさまじい盛り上がりを見せるクラシコ。
近年のクラシコで起こった事件や出来事を、時系列で振り返ってみましょう!
裏切りのフィーゴと豚の頭(動画)
2002-2003シーズン
クラシコにおける事件といえば、今なお語り継がれるこの事件。
バルサからレアルへ。「禁断の移籍」を遂げたフィーゴ。
対戦前から、フィーゴの顔が印刷された札がばら撒かれるなど、バルサファンの怒りの坩堝と化していたカンプノウ。試合中コーナーを蹴ろうとしたフィーゴに対し、バルサファンが瓶やゴミを投げる、投げる!さらには豚の頭まで!
ファンをなだめるプジョルがカッコいいです。
なぜフィーゴがここまで憎まれ、恨まれたか。
バルサ時代のフィーゴは、バルサのリーダーであり、象徴でした。トロフィーを掲げ、「レアルの泣き虫野郎!」と叫ぶフィーゴは、クレたちの英雄だったのです。
にもかかわらず、プレイヤーとしての全盛期にライバルチームのレアルに移籍。移籍の数日前まで、「移籍はしない」と発言していたのも、反感をを買った理由です。ファンにとっては、裏切りとしか思えなかったでしょう。
この年、レアルはリーガを制し、対するバルサはなんとシーズン6位。バルサは、出口の見えない暗黒期の真っ最中でした。
ロナウジーニョ、ベルナベウに降臨 敵地のスタンディングオベーション(動画)
2005−2006シーズン
メッシ、ロナウドも異次元の存在ですが、全盛期のロナウジーニョは本当にヤバかった!
そんなロナウジーニョが躍動したのがこの年のクラシコです。
左サイドでボールを受け、強靭な体躯と独特のリズムで疾走。レアルのDF陣を完全に子供扱いし、2ゴールを叩き込んで見せます。完全にお手上げといった感じのカシージャスの表情が印象深い。
その圧倒的なまでのプレーは、敵地サンチャゴ・ベルナベウのファンをして、スタンディングオベーションをさせるほど。この日のロナウジーニョは、敵チームのファンであってもプレーに心酔させてしまうような、ある種勝敗を超越してしまうような存在でした。
奔放なプライベートから全盛期も短かったロナウジーニョ。もっとストイックにサッカーやってればって声もあるんですが、この人がストイックだったら、あんなエンターテイメント性あふれるプレーは逆にできなかっただろうなあ。
受け継がれるファンタジー メッシ、クラシコ初ハット(動画)
2006ー2007シーズン
早くもロナウジーニョに衰えが見え始めていた(というか、デブりはじめていた)シーズン。しかし、バルサには神童がいました。
リオネル・メッシ。当時弱冠19歳。
3−3と撃ち合いになったクラシコで、メッシがハットトリックを達成。バルサを敗北から救います。
この年、レアルは「優勝請負人」カペッロが監督就任しており、彼はレアルを見事優勝に導きます。(そして、その後「つまんねえサッカーしやがって」ってことで解任されます。優勝して解任される指揮官なんて聞いたことねえw)
チームとしての完成度は、シーズン通しても、この試合だけ見ても、明らかにレアルが上。バルサは、メッシの頑張りによってなんとか勝ち点1を持って帰れた、そんな試合でした。
レアル完勝 本拠地ベルナベウの花道(動画)
2007−2008シーズン
このシーズン、レアルはシュスターがカペッロから前年優勝チームを引き継ぎ、方やバルサはライカールト政権の末期。チーム力の差は、結果に如実に現れます。
リーガのクラシコは、2試合ともレアルの勝利。2度目のクラシコ前にレアルが優勝を決めていたため、ベルナベウでバルサの選手達が花道を作ることになりました。
本拠地で、ライバルチームの選手の花道。レアルファンにはたまらないシーンだったでしょう。試合自体も、レアルが4−1でバルサを粉砕。バルサのキーパー、バルデスが涙目になるほど、このシーズンの両チームの差は大きかったのです。
名将、グアルディオラ登場 初年度3冠の離れ業
2008ー2009シーズン
シュスターが2期目に入ったレアルに対し、青年監督グァルディオラを招聘しチームの立て直しを図るバルセロナ。このシーズンも、大勢はレアルが有利・・・のはずでした。
しかし、終わってみればクラシコは2試合ともバルサの勝利。2試合目は、レアルの本拠地ベルナベウで、2−6という衝撃的なスコアでバルサが勝利します。
グァルディオラは、就任初年度に3冠(リーガ、CL、コパ・デル・レイ)という離れ業を達成。方やシュスターはシーズン途中で成績不振により解任されます。
たった1年で、チームの力がこれだけ劇的に入れ替わってしまう、
これだからクラシコは、そしてサッカーは面白いんです!
グァルディオラ対モウリーニョ 名将同士のライバル対決
2010ー2011シーズン
この年から、レアルの監督にモウリーニョが就任。元バルセロナのコーチだったり、チェルシー時代にCLでバルサを撃破した際、あまりに喜びすぎてバルサ勢の反感を買うなど、何かとバルサと因縁のあるモウリーニョ、
ここからモウリーニョ退任までの間、バルサとレアルのライバル関係は良くも悪くも近年で最高潮に達します。
注目のクラシコ初対決は、5−0でバルサの圧勝。いわゆる、「マニータの夜」です。
「マニータの夜」の動画はこちら。
しかし、ベルナベウでの2戦目は、1−1のエンパテで終了。しっかりチームを作ってくるあたり、モウリーニョもさすがです。
モウリーニョ、ビラノバに目潰し!(動画)
2011ー2012シーズン
モウリーニョ政権2期目、この時期の両チームのライバル関係は、行き過ぎといっても過言ではないものでした。
シーズン開始前、スペインスーパー杯での、モウリーニョのビラノバに対する目潰しはその最たるもの。リーガ開始前のゲームで乱闘騒ぎが起きるってのも、普通じゃありません。
この時期、スペイン代表はW杯とユーロを連覇するなど黄金期だったんですが、レアルとバルサの選手間の関係も悪化。両チームのカピタン、カシージャスとチャビも電話で決裂寸前の状態にまで関係が悪くなります。
ペペがメッシを故意に踏みつけるなど、個人的にはクラシコが向かうべきでない方向、健全ではないライバル関係に向かってしまった時代だったと思っています。
アトレティコの台頭と、新たなスタート
2013−2014シーズン
ビラノバが病気で退任したバルサと、モウリーニョがとうとう解任されたレアル。それぞれタタ・マルティーノとアンチェロッティという新しい指揮官を迎えてのスタートとなったのがこのシーズンです。
クラシコは、2試合ともバルサの勝利(2−1、3−4)。ベルナベウでのクラシコでは、メッシが2度目のハットトリックを達成します。
しかし、この年リーガを制したのはレアルでもバルサでもなく、シメオネのアトレティコでした。
長らくレアルとバルサの2強時代が続き、コンペティション的に魅力が薄れていたリーガ。クラシコ以外に熱狂できる試合が増えることは、基本的にはリーガにとってはポジティブなこと。
これ以降、リーガコンペティション的に魅力を増していくことになります。
2017-2018シーズンのクラシコの日程と開催地、見どころ
さて、2017-2018シーズンのクラシコの日程と開催地は、
2017年12月20日 @ベルナベウ
2018年5月6日予定 @カンプノウ
となっています。
今期は、バルサのMSNはネイマールの移籍により解体、
レアルのBBCもアセンシオの台頭により変化が予測されます。
バルサはイニエスタをはじめとした主力が高齢化しているにもかかわらず、夏の時点では満足のいく補強ができませんでした。対するレアルはイスコが存在感を増すなど、明るい話題に事欠きません。
ここ数年、この2チームの状況が昔と逆転しているかのようですね。下部組織からの若手の台頭はバルサのお家芸だったのですが、高額な移籍金で外からスターを買い漁ろうとする(デンベレについては、明らかに移籍金高すぎ。。)今のバルサのは、以前のレアルを見ているようです。
今年のクラシコは、レアル優勢です。マドリディスタにとってはたまらないシーズンになるのではないでしょうか。