スペイン国内でも、バスク地方と並んで住民の独立心が旺盛なカタルーニャ地方ですが、2015年になって、カタルーニャ州独立が徐々に現実味を帯びてきています。
2014年に非公式で行われた住民投票で8割の住民が独立を支持していましたが、
2015年9月に行われた州議選により独立派が過半数の議席を獲得、
その後、2015年10月には、州議会に独立宣言文書が提出されるに至りました。
この記事のもくじ
カタルーニャ州はなんでこんなに独立したがるのか
スペインは、もともと国家としての結びつきがそれほど強い国ではありません。その中でも、特に独立心が強いのがバスクと、このカタルーニャ地方です。
これは、カタルーニャ地方が歴史上自治を貫いてきた期間が長かったことに由来します。カタルーニャは、スペインがイスラム勢力の支配下にあった時代ですら、自治を守り抜いてきたのです。
さらに、近年経済が低迷するスペインにおいて、カタルーニャは優等生であることも理由。スペインの財政を支えていながら、満足な恩恵が受けられていないと考えるカタルーニャの人々の間で、独立を目指す気運はどんどん高まっていったのです。
カタルーニャは独立できるのか
しかし、いかに州議会で独立派が過半数を占めたとしても、独立にはまだまだハードルがあります。
スペインの法律は、自治州の独立を認めていません。そして、カタルーニャの独立はスペインにとって経済面で大打撃になります。
今後はスペイン中央政府との法的な闘争となる可能性が濃厚です。
カタルーニャが独立したら、バルサやリーガはどうなるのか
で、やっぱり気になるのはこの話。
カタルーニャが独立しスペインでなくなった場合、リーガ・エスパニョーラへの参加資格がなくなります。
スペインの法律上、スペイン国内のチームでなければ、スペインのリーグに参加することができないのです。まあ、アンドラみたいな例外はあるみたいですけど、少なくとも、カタルーニャ独立国がスペインのリーグに参加することは今の法律では無理です。
法律が変わらない限り、バルサはリーガからサヨナラです。
フットボール界の一大イベント、伝統の一戦クラシコも、もしかすると数年に1回(チャンピオンズリーグなど)でしか見れなくなってしまうかもしれません。
カタルーニャ独立の場合の選択肢は?
もしもカタルーニャが独立した場合、現実的そうな選択肢は、
1 カタルーニャ州内のみで新たにリーグを作る
2 スペインの法律改正により、アンドラのように特例を作ってリーガに参加する
3 他国のリーグに参加する
という感じ。
3も、あながちぶっ飛んだ話でもありません。現フランス首相のマヌエル・ヴァリュスは、カタルーニャ独立の際のバルサのリーグ・アン(フランスのリーグ)参加を歓迎するコメントを出しています。
これはこれで法改正とか必要そうな気がしますが、リーグアンの現状を見る限り、バルサの参加を拒む理由はないように思います。地理的にも近いですしね。
放映権料の影響は?
ここでちょっと検討してみたいのが、バルサが現在受け取っている放映権料です。
スポーツクラブの収入は、「チケット収入」、「スポンサー収入」、「放映権収入」、それに「グッズ販売等による収入」がありますが、この中で所属リーグが変わることで最も大きな影響を受けるのが「放映権収入」だからです。「チケット収入」、「スポンサー収入」も影響がないわけではないでしょうが、放映権収入の影響は甚大です。
注:
リーガでは長らく放映権料の一括管理がされておらず、各クラブが個々に放映権料の交渉を行っていました。結果、レアル、バルサとそれ以外のチーム間で放映権料格差が発生していました。
2015年に、リーガでも放映権料一括管理の法案が成立したものの、その後ストライキだなんだでゴタゴタしたので、この問題が現在どうなっているのか、今後どうなるのかはわかりません。
しかし、放映権料が一括管理「されていない」という状態の方が欧州サッカーのスタンダードからすると異常なので、バルサがリーガを脱退したのリーグに所属した場合、現在のような放映権料の受け取り方はできないことはほぼ確実です。
リーガの放映権料
デロイト・フットボールマネーリーグ2015の資料によれば、2013ー2014シーズンにバルサが受け取った放映権料は実に「245億円」。これは、バルサの総収入654億の4割弱を占める数字です。
いかにバルサといえども、この放映権料がなければクラブの経営は成り立たないでしょう。そう考えると、「カタルーニャリーグ」の創設の可能性は限りなく低いと言えます。新興リーグの放映権が、こんな値段で売れるとは到底思えません。
リーグアンの放映権料
では、首相がバルサの参加を歓迎しているフランス、リーグアンの放映権料はいかほどでしょうか。
同じく、デロイト・フットボールマネーリーグ2015の資料によれば、2013−2014シーズンに最も多くの放映権料を受け取ったチームは、パリサンジェルマンの「113億円」です。
リーグアンの放映権料は、現在バルサが受け取っている放映権料と比べるとかなり低い水準(というか、バルサが受け取っている水準が高い)と言えます。バルサがもしリーグアンに加入した場合、リーグアン自体の放映権料は間違いなく増えるでしょうが、バルサが受け取る放映権料は減少する可能性が濃厚です。
バルサは本当にリーガを脱退するのか?
こうしてみると、リーガ・エスパニョーラからの脱退はバルサにとってはデメリットの方が大きいように思えます。バルサにとって、リーガに残留できるのであれば、その方が望ましいでしょう。
一方、クラブ自体がメガコンテンツであるバルサの脱退は、リーガにとっても深刻な問題です。コンペティションとしての魅力が薄れるだけでなく、「エル・クラシコ」が消滅してしまうわけですから。せっかく放映権料一括管理に向けて進み始めたにもかかわらず、放映権料の暴落は避けられないでしょう。
チャンピオンズリーグでクラシコが実現する可能性はありますが、それではリーガにはお金入りませんしね。
バルサのリーガへの残留・脱退問題、
これに関しては、リーガ、バルサ双方の利害関係は相反していないように思えます。今でこそ、カタルーニャ独立の際はバルサはリーガに残れない、と政府のエラい人は発言しているようですが、いざカタルーニャの独立がなってしまった際にはあっさり法改正が行われてリーガ残留となる気がしてなりません。
とはいえ。これは全部予測にすぎず、本当にバルサがリーガを脱退してしまう日が来るかもしれません。クラシコを毎年楽しみにしている身としては、そうならないことを祈るばかりです。
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